【テレビ座談会】令和のテレビ番組制作のリアル情報収集術

最終更新日: 2026年09月18日(金) PRのヒント

「最近、テレビに露出するのが難しくなった」「番組制作会社に直接提案しても返信が来ない」——企業の広報担当者から、そんな声を耳にすることが増えています。テレビ制作の現場では、ネタの探し方や採用の判断基準が変化しています。報道・情報番組の制作経験を持つPR戦略局の長沢・下田・鈴木の3名が集まり、昨今の制作陣のリアルな情報収集術と、取材につながる情報の届け方を語り合いました。

【座談会メンバー紹介】

長沢 聡士
報道・情報番組の制作を10年経験し、現在はPR戦略局のメディアスペシャリストとして、各案件の企画設計やメディアアプローチを担当。

下田 勝美
スポーツ中継を8年、その後、情報・報道・経済番組を9年担当。現在はPR戦略局で、各案件の企画設計やメディアアプローチを担当。

鈴木 貴大
情報番組のディレクターを8年経験。現在はPR戦略局で各案件の進行業務の他、テレビメディアへのアプローチも担当。

かつての「キーマンへの個別アプローチ」だけでは刺さらない?

――皆さんがテレビ業界に入った頃と現在では、番組のネタの集め方はどう変わりましたか?

下田:9年ほど前、情報番組にいた頃は、とにかくYahoo!トピックスに上がっているネタを広げられないか、というところから探すことが多かったですね。報道番組は今もあまり変わらず、起きた事件・事象からどう展開するかが基本ですが、情報番組では「面白いだけ」では取り上げられにくくなっています。もっと踏み込んで、解決策や社会的意義まで見せられるかが問われるようになりました。

長沢:Yahoo!ニュースや地方紙なども引き続き見られていますが、今はSNSで話題になっているものを会議に持ち込む人が増えている印象です。ただ、新商品も単に「発売されました」だけでは弱い。誰のどんな悩みを解決するのか、どんな社会課題の解決に役立つのかまで見えないと、取り上げにくくなっています。

――メディアキャラバンやFAX、リリース送付といった従来のアプローチは、今も通用するのでしょうか?

下田:通用はすると思いますが、リリースを渡すだけでは厳しくなっています。以前はテレビ側から「これは何ですか?」と詳細を聞いてくれることも多かったんですが、最近は減っていて、今は送る側から「リリースにはない、こんな情報もあります」と付加価値を提示する必要があります。ニュースの本数自体が増え、20〜30秒のタイトルだけのショートニュース枠も増えているので、情報を受け取る側の余白も減っている気がします。

長沢:メールのほかLINEやSNSまで情報源が増え、制作側も“情報疲れ”しています。件名がつまらなければ、メールを開いてもらえないこともある。面白さを冒頭で示し、要点だけでテレビに使えるかどうかを判断できる形にすることが大切です。インパクトのある写真に一文を添えるだけで、興味を引けることもあります。

鈴木:番組側は、「一つの商品」や「一社のみ」を取り上げる構成よりも、社会的な現象やトレンドとして成立しているかを重視する傾向があります。そのため、メディアキャラバンでは、他社事例や市場動向などもあわせて提示し、「今、注目すべきテーマ」として企画性を持たせることが重要です。ディレクターに単に取り上げをお願いするのではなく、情報を整理したうえで「企画提案」として提示することで、番組にとって有益な情報だと判断してもらいやすくなり、具体的な反応につながると思います。

「テレビマンは何を見ているか?」スマホ画面の向こう側のリアル

――テレビ制作スタッフは、日常的にどこから情報を集めているのでしょうか?

下田:制作現場にいた頃は、Facebook、TikTok、Instagram、X(旧Twitter)は一通りチェックしていました。あとは、Yahoo!のランキングやトピックス、面白いものを取り上げるサイトも参考にしていましたね。

長沢:テレビには映像が必要なので、InstagramやYouTubeはやはり強いです。Xでも写真や動画があれば、どんな画が撮れるか想像しやすい。大手新聞社や地方紙など、記者が裏を取ったWEBニュースも重視されます。SNS発の話題はAIで作られた画像や映像も増えたため、特に事故や災害については、信頼できる情報源かどうかを慎重に確認する必要があります。

鈴木:私はテレビでリサーチしていた頃の情報収集方法を、PRの仕事に就いてからも変えていません。InstagramとYouTubeを中心に見ています。YouTubeのショート動画なども、興味がないからと流してしまわず、今後の引き出しとして頭の片隅に入れておきます。

――SNSの反応のうち、テレビマンはどこを重視していますか?

下田:「いいね」の数やコメントの内容よりも、再生数や、トレンドワードになっているかどうかのほうを重視している印象です。コメント欄まで細かく見る時間はなかなか取れないので、「何万回再生された」「ほかのサイトにも転載された」といった客観的な数字や実績があると、判断しやすくなります。

長沢:それと「報道連鎖」もありますね。一つの番組が取り上げると、その週のうちに各局が追随するように取り上げ始めることが多いです。各局が同じジャンルの番組をチェックしているので、そこから情報が広がっていく面もあります。

――SNSで話題になってから、企業がテレビ側にアプローチするベストなタイミングはありますか?

長沢:正直、企業側から「バズっているのでお願いします」とアプローチしても、あまり効果はないと思います。バズは第三者が見つけ、広がっていくものという感覚がテレビ側にはあるからです。企業側から言えるとすれば、「行列ができている」「売上がこれだけ伸びている」といった客観的な事実のほうです。

下田:バズを狙って発生させるのは、正直かなり難しいですね。

鈴木:何をもって「バズった」と判断するかは番組によっても異なりますが、「トレンドワードに上がっているか」「何万いいね!を超えているか」などは一つの目安になります。また、デイリー番組であれば数日前、ウィークリー番組でも1週間程度前から動き始めるケースがあります。SNSで話題になった際は、その勢いだけを伝えるのではなく、放送タイミングから逆算して、客観的な数字や実際の反響と合わせて情報提供することが効果的だと思います。

「画映え」×「社会性」で落とし込む!取材を引き寄せる資料とは?

――テレビ制作陣が言う「画(え)になる」とは、具体的にどんな映像やシチュエーションを指すのでしょうか?

下田:動きや変化のあるものですね。温度差や風の強弱など、映像を見ただけで違いが伝わるものです。例えば日傘の実験で、傘の上と下で温度が大きく異なることを画面上で見せられる、といったものはネタになりやすいと思います。

長沢:発表会は「記者体験会」という形にして、記者自身が体験できる設計にすることも多いです。以前、知名度がそれほど高くない企業の案件でしたが、Wi-Fiの電波によって人の動きや呼吸、脈拍まで検知できる見守りデバイスを紹介しました。その際は、実際に記者に体験してもらい、画面に呼吸数がグラフで表示される様子を見せたところ、しっかり取材につながりました。記者自身が体験レポートできることと、数字で見せられることが効いたと思います。

――「なぜ今、この話題を扱うのか」という社会性・時事性については、どう考えればよいでしょうか?

下田:時事性・社会性はかなり重要になってきていますね。地震があれば防災グッズ、大雨や台風であれば水に強い商品といったように、視聴者が「自分ごと」として受け取れる解決策に置き換えられるかがポイントです。

長沢:出すタイミングも早すぎず遅すぎずが大事です。季節ものであれば、1〜2カ月前くらいが目安ですね。熱中症対策のように天候や地域によってタイミングが変わるものもあるため、状況を見ながら判断する必要があります。

――採用されやすい資料には、どんな共通点がありますか。

下田:最後まで読まないと魅力が伝わらない資料は厳しいです。ページ数が多くなると、それだけで面倒に思われてしまう。テレビは尺が限られているので、1〜2ページで要点を伝え、最初に「これが撮れます」という肝心な部分を見せる、いわば「チラ見せ」の構成のほうが興味を引きやすいです。

長沢:仕様書のように細かい情報をすべて詰め込んだ資料もよく見ますが、正直、ほとんど読まれません。何のために役立つのか、ポイントだけを1〜2ページにまとめるほうが、興味喚起につながります。

鈴木:商品やサービスの説明だけでなく、実際に人が体験している様子や、普段は見られない裏側など、“画になるポイント”が一目でわかる写真や動画があると、企画をイメージしやすくなります。

テレビに取り上げてもらうために、広報担当者がまずできること

――最後に、テレビに取り上げてほしいけれど、何から始めればいいかわからない、という企業広報の方に向けて、まず何から始めるべきか、アドバイスをお願いします。

長沢:テレビのサイドテロップやYahoo!ニュース、LINE NEWSのタイトルのように、短い文字数で内容を伝える練習をするのがおすすめです。自社のリリースを14文字2行以内でキャッチーなタイトルにできるか、練習してみるとよいと思います。あとは、自分のリリースだけを材料に、ネットで調べずに実際に報道向け資料を作ってみることです。書いてみると、情報が足りているか、過不足がどこにあるかがよくわかります。

下田:資料は自分で作ってみないとわからないことが多いですね。自社が出したリリースの情報だけでどこまでうまく見せられるか、一度やってみると、リリースそのものの改善点が見えてくると思います。

長沢:企業側がネット上で「見つけてもらう仕組み」を作ることは、これからますます大事になると思います。ただ、バズらせること自体を狙って何度もバズを起こすのは難しい。だからこそ、自社の強みを「画になるかどうか」と「なぜ今なのかという文脈」に分解して整理しておくことが、最初の一歩になるはずです。

鈴木:まずは、自社の商品や取り組みを「テレビで放送するとしたら、どんな映像になるか」という視点で、一度整理してみることをおすすめします。例えば、新商品なら商品そのものを見せるだけでなく、「誰が、どこで、どう使うのか」「これまでと何が変わるのか」まで考えてみると、テレビで伝わりやすい視点が整理できると思います。

テレビPRは「待つ」から「見つけてもらう」時代へ

テレビとのコネクションがなくても、SNS上の反応や行列、売上など、生活者の関心を示す事実があれば取材のきっかけになります。一方、バズだけを目的にしても再現性は低く、番組の視聴者層と合わなければ採用にはつながりません。

まずは自社の情報を、「どんな画が撮れるか」「なぜ今、伝えるのか」「生活者の関心を示す数字や事実があるか」という3つの視点で整理してみる。そのうえで、制作側が短時間で判断できるタイトル、1〜2ページの資料、写真や参考動画を用意し、番組の傾向に合わせて届けることが第一歩です。

自社だけでは、何が「画になる」のか、どのタイミングでどの番組に届けるべきかを判断しにくいこともあります。そうした場合は、テレビ制作の現場とプロモートの双方を知るPR会社に相談することで、情報の発掘から発表会の演出、メディアへのアプローチまで一貫した設計が可能になります。

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