メディア編集長が語る「読まれるプレスリリース」の条件――記事になりやすいネタ・書き方・画像とは?

最終更新日: 2026年07月21日(火) PRのヒント

毎日大量に届くプレスリリース。その中で、メディアに「読まれるリリース」と「スルーされるリリース」の違いはどこにあるのでしょうか?今回は、株式会社オンエアで、「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「bizSPA!(ビズスパ)」など、複数のWebメディアで編集長の経験を持つ、メディア事業統括編集長・山口さんに、「読まれるプレスリリース」の条件について聞きました。

“実際に体験できるもの”が記事化につながりやすい

――編集者は実際、毎日どれくらいプレスリリースを見ているのでしょうか?

山口:媒体にもよりますが、1日に1000件近いメールを見ることもあります。ただ、その中で実際に記事化されるものは0〜3件くらいですね。オンエアの媒体だと、商品提供や試食会、プレスツアー、内覧会など、“実際に体験できるもの”が記事化につながりやすい。やっぱり現場に行けると独自性が出しやすいからです。

――編集者は普段、どんなタイミングでネタ探しをしていますか?

山口:ネタ探しの時間を作るというより、仕事中ずっと探している感覚です。記事を校正しながらAIで調べ物をしたり、SNSで拡散度を見たり、公式情報でファクトチェックをしている最中に、「これ面白いかも」と横道に逸れることが多いですね。

以前のようにプレスリリースサイトを定期的に見ることはなくなりました。ただ、記事にしたいネタが見つかったとき、その商品やサービスにPR担当がいるかどうか調べるためにPR TIMESなどを検索することはあります。広報に直接電話するより、PR担当にメールするほうがスピーディーに記事化できることが多いからです。

SNSは記事にしたいネタの反響をみるためにチェックします。「いいね」の数やTikTokのバズを、記事化の判断の参考にしています。

一方で、テレビの情報番組は今も毎日見ています。『めざましテレビ』のような朝の情報コーナーですね。以前は「テレビに出た後では遅い」と言われていましたが、今はトレンドが細分化しているので、テレビで見てから取り上げても間に合うケースがあります。

あと、自社の運営する「TABIZINE(タビジン)」なら旅先、「イエモネ」なら街中の店舗など、リアルな現地情報は一番大事なネタ元です。

一瞬でわかるメールタイトルが重要

――「これは見ない」「開かない」と判断するリリースには共通点がありますか?

山口:メールのタイトルを見た瞬間、何の話なのか直感的にわからないものは、開かずスルーすることが多いですね。知名度のない会社名だけが先頭に来ていたり、「キャンペーン」のような言葉だけでは、価値が伝わってきません。

多くの編集者は、メールもリリースサイトも基本的にはスクロールしながら流し見しているので、一瞬で意味が伝わらないと、その先まで読もうとせずスルーしてしまう場合が多いと思います。

――それで、「タイトルの最初の9〜13文字が重要」と言われるんですね。

山口:人間が瞬間的に認識できる文字数には限界があり、13文字を超えると、「読む努力」が必要になるといわれています。新人編集者にもよく言うんですが、斬新さを狙いすぎるより、「一瞬で意味がわかる」ことを優先したほうがいいです。

――編集者が「続きを読みたい」と感じるリリースのポイントは?

山口:媒体ジャンルに合っているもの、旬のキーワードが入っているものです。あと、人間なので、自分の趣味や興味に引っ張られる部分もあります。

例えば、自分が日本酒好きだったら、日本酒関連のメールはやっぱり気になるものです。もちろん、読むことと記事化することは別ですが、「とりあえず読んでみよう」という気にはなります。

――「日本初」「1分に◯個売れる」など、“強いファクト”はなぜ重要なんですか?

山口:ブランド名や商品名だけで価値が伝わるケースは、実際は少ないので、「誰が聞いてもわかる強い事実」が必要になるんです。「日本初」とか、「1日◯個売れている」といった言葉は、他人に説明しやすい価値の裏付けにもなります。

一定の層の中で熱狂的に支持されているとヒットの種になりやすい

――有名ブランドでなくても記事化されることはありますか?

山口:もちろんあります。「これから来そう」と感じるものですね。一般層にはまだ知られていなくても、特定の界隈では有名といったケース。例えば、「食通の間では知らない人がいない」とか、一定の層の中では熱狂的に支持されているものは、“ヒットの種”になりやすいです。

特に最近は、県民ネタやローカルネタが強いですね。ソウルフードのような、その地域では当たり前だけれど外の人には新鮮なもの。コロナ禍以降、ローカルの魅力に注目する人が増えた感覚があります。

――編集者が「面白い」と感じるものはどんなものですか?

山口:独自性があるもの、信念を感じるものですね。あと、企画っぽさが強くないことも大事だと思います。

本気で何かに打ち込んでいる人には惹かれます。「そこまでやる!?」と思うほどの熱量がある人ですね。命をかけるレベルで何かをやっている人を見ると、もっと掘り下げたくなります。

一方で、仕事として考えると、「ビジュアルで価値が伝わるか」はすごく重要です。自分はそこまで興味がなくても、「これは一瞬で価値がわかる」と思えば、記事化しやすいです。

――アイキャッチ画像で重要なことは?

山口:Web記事のアイキャッチについては、単体できれいかどうかより、「サムネイル一覧で並んだときに埋もれないか」を重視しています。情報量が多い写真は、一枚で見ると素敵でも、サムネ一覧だと他の画像と一体化して埋もれることがあります。逆に、余白がある写真のほうが目立つこともある。だから、引き算はすごく大事ですね。

取材時から、アイキャッチは複数パターンを意識して撮ることもあります。長期間掲載する特集だと、途中で差し替えることもあります。あと、現場に行った人と、初見ユーザーの見え方は全然違うので、「初見1秒で何が伝わるか」はかなり意識しています。

ですから、リリースにおいては、集合写真に商品が多すぎて何が写っているかよくわからないものや、文字が大きく入ったチラシ広告のような画像しかないものは、たとえ情報が良くても記事画像として使えないと思ってしまいます。

AIは相棒、相手が何を知りたいかを考えることが大事

――最近、「反応が取りやすい」と感じるテーマはありますか?

山口:移住、インフィニティ、節約、ローカルネタ(県民ネタ、ソウルフード)あたりは強いですね。ビジネスクラス、道の駅、マーラータンなども反応がいいです。

ただ、媒体によって強いキーワードは全然違うので、「世の中的に流行っている」と「自分たちの媒体でヒットする」は別だったりします。例えば、サウナは強いと言われていますが、我々の媒体ではそこまで実感値がないですね。逆に、世の中では海外旅行が下火ですが、TABIZINEでは国際線ビジネスクラスの情報が非常に反応が良いです。

――媒体の特性や編集者個人の好みはどれくらい影響しますか?

山口:かなり影響します。媒体特性と編集者の好みを理解してPRするのと、何も考えず送るのでは、確度が3倍くらい違うのではないでしょうか。

やっぱり人間なので、自分が興味あるテーマは「どうやったらヒットするかな」と考えたくなります。私の場合、ボードゲームとか謎解きが好きなので、それを知っているPR担当者からは、よく関連企画の提案があります(笑)。

――AIで文章を作る企業も増えていますが、“人が書く意味”は残ると思いますか?

山口:現状では、感動させたいなら人が書いたほうがいいと思います。AIは、一定水準を超える文章を作るのは本当にうまいのですが、“心に引っかかるもの”はまだ弱い。

発想の飛躍や直感、「まだ誰も気づいていない楽しみ方」を発見するような部分は、まだ人間の領域かなと思います。

AI自体は敵ではなくて、いい相棒だと思っています。でも、「自分で深く考えない人×AI」の成果物には危うさを感じますね。

――最後に、「読まれるプレスリリース」を作るうえで、一番大事なことは何でしょうか?

山口:「自分の言いたいことを、相手の欲しい言葉で語ること」です。自社の言いたいことをそのまま並べるだけなら、それはプレスリリースではなくただのメモになってしまいます。相手(ターゲット)が何を知りたいかを考えることが、一番大事だと思います。

――最後に、“編集者に嫌われないPR担当”になるコツを教えてください。

山口:自分の頭で考えて、自分の言葉で語ることが重要です。具体的には、次のようなことを意識するといいのではないでしょうか。

・何も考えず、手当たり次第に電話アプローチをしているように思わせない

・メディアキャラバンではプレスリリースにない情報を自分の言葉で話す

・担当案件のよさを「本当にいいと思っているようにイキイキと話す」

・深い商品理解で質問にちゃんと答えられる

――ただ商品やサービスの情報を羅列するだけでは、毎日膨大に発信されるプレスリリースの中で埋もれてしまいます。「読まれるプレスリリース」のポイントを知ることで、取材の確度が変わるかもしれません。コツを掴んだリリース作成、明日からぜひ実践してみてください。

関連記事