取材したくなる「プレス発表会」の共通点とは? PR会社が教えるメディアに選ばれる企画と準備

最終更新日: 2026年08月04日(火) プレス発表会

プレス発表会は、企業にとって大きな投資です。しかし、開催すること自体が目的化してしまい、思うようにメディアに取り上げられなかった。そんな経験を持つ広報担当者も多いのではないでしょうか。今回は、PR戦略局でマネージャーを努める佐藤に、「メディアが動く発表会」をつくるための考え方と実践のポイントを聞きました。

PRのプロから見た「成功する発表会」と「失敗する発表会」

――成功する発表会の条件とは何ですか?

佐藤:発表会は案件ごとに目的がまったく異なるため、まずお客様と認識をすり合わせ、目的を明確にすることが私たちの仕事の出発点です。そのうえで成功のポイントは、伝えたいメッセージをメディアが社会に伝えたいと思える内容へと変換できているかどうか。リリースを読めば記事が書けるなら、わざわざ当日取材に来る必要はありません。その場に行かないと聞けない話、撮れない画があるかどうかが重要です。

――逆に失敗する発表会とは?

佐藤:企業が言いたいことだけを一方的に発信してしまうケースです。「良い商品なので使ってください」で終わるのではなく、その商品がなぜ生まれたのか、社会や消費者にとってどんな意味があるのかというストーリーが必要です。

また、タレントを起用すれば取材メディアは増えますが、発言が切り取られるリスクも伴います。だからこそ、切り取られるのが前提で、意味のある切り取られ方になるよう演出段階から設計することを意識しています。

記事化の数だけでなく、ブランドイメージへの寄与やその後のリレーションも重要

――誘致するメディアの数以外に大切にしていることは何ですか?

佐藤:誘致数はもちろん重要ですが、発表した内容がどう編集され、社会に伝わっていくかという「質」も大切にしています。そして発表会当日は、メディアの方に直接「今日の発表会はどうでしたか?」と感想を聞くようにしています。生の声を聞くことで、企業や発表内容への評価や期待感を把握でき、次回以降の企画やメディアとの関係構築にもつながります。

メディアが「行きたい」と思う3つの構成要素

――メディアに「行きたい」と思わせる要素を教えてください。

佐藤:メディアは企業の発表を報じるのではなく、「社会にとってニュースになること」を報じます。だからこそ、以下の3つが重要です。

(1)なぜ今それを取り上げる必要があるのかという社会性

(2)その場に行かないと得られない意外性や初出し情報

(3)写真・映像として映える「画づくり」

たとえば家電メーカーの炊飯器の発表会では、その場で炊飯器を開けて炊きたてを香りごと体験してもらい、商品開発者が説明する演出にしたことで、写真映えする画と共感を同時に生み出しました。体験を通じて理解を促す試食会など、報道の正確さと共感・拡散される見せ方の両立を狙う企業が増えています。

――そうした体験型の発表会が増えているのはなぜですか?

佐藤:メディアとSNSの境界が曖昧になってきていることもあり、説明だけでなく、写真映え・動画映えする演出の重要性が高まっています。消費者目線のリアルな体験記事は感情が動きやすく、拡散されやすいということもあり、エンゲージメント向上にも直結します。また、報道以外のメディアを「取材者」ではなく、「ブランドの共感者」や「ファン」と捉える必要性が生じている側面もあると考えています。

準備のフェーズでPR会社が現場で徹底していること

【タイムラインの設計】

――実際に発表会を行う場合、準備はいつから始めるべきですか?

佐藤:規模によりますが、キャスティングやステージ演出など物理的な制作が発生する場合は4〜6カ月前から。情報編集に特化できる内容であれば、2カ月前からでも対応可能です。

【登壇者のトレーニング】

――社長や開発者など登壇者の「言葉」はどう磨くのでしょうか?

佐藤:プレゼン資料やスピーチは、軸となるメッセージをもとにお客様と議論しながら一緒につくり上げていきます。そして、想定質問(Q&A)は漏れなく整理し一覧化して事前にインプットいただきます。初めて登壇する方については、メディア発表会とは何か、来場するメディアの特徴は何かをまとめた資料をお渡ししています。

【会場選びや演出、運営・誘致面】

――開始時間や案内状のタイミングにコツはありますか?

佐藤:テレビ取材を狙う場合は報道番組の締め切りに合わせるのが基本です。当日取材・当日報道が原則の夕方や夜のニュース番組を狙うなら13〜14時開始がデッドラインになります。案内状は3週間前を目安に配信しますが、メディア側のスケジュールを抑えていただくためにも内容が固まっていなくても早めに一報を出し、その後アップデートを重ねるのがおすすめです。

――準備段階で差がつくのはどこでしょうか?

佐藤:メディアへご案内するメールの「質」です。件名を端的にまとめ、概要・日時・取材ポイント・なぜ今なのかという背景まで、誰が読んでも分かりやすい案内文になるようフォーマットを整えています。取材ポイントが明確に書かれているかどうかで、メディアの反応は大きく変わります。

現場のトラブルを回避するチェックリスト

――現場運営で見落としがちな点は何でしょうか?

佐藤:責任の所在を明確にしておくことが重要です。発表会は生ものなので、想定外は必ず起こります。誰が最終判断を下すのか、連絡系統をあらかじめ決めておけば、どんなトラブルにも迅速に対応できます。 もし登壇者が誤った発言をした場合はMCと連携し、その場で訂正するのが最もスムーズです。機材トラブルやメディアの想定超過なども、進行ディレクターを通じてMCに指示を伝える体制を事前に固めておきます。

メディア露出を最大化させるためのフォローアップ

――事後リリースの配信タイミングは、いつがベストですか?

佐藤:内容次第です。エンタメ系や速報性が求められる内容は、当日中に配信できるよう、8〜9割固まっている原稿を事前に用意しお客様の決裁を取っておきます。新商品・新サービスの発表でない場合は、速報性が低いことも多く、翌日以降になることもあります。

――欠席メディアへのフォローは、どのようにしていますか?

佐藤:事後リリースに加え、写真や動画などのオフィシャル素材を提供します。出席メディアにも、単なる御礼だけでなく使いやすいビジュアル素材を添えて送るようにしています。

――発表会終了後、広報担当者が必ずすべきことは何でしょうか?

佐藤:メディアと直接コミュニケーションを取ることです。当日は運営対応に追われがちですが、来場したメディアがどう感じ、どんな記事になりそうかを受け取る意識を持たないと、本当に欲しい情報は得られません。

――あらためて、良いプレス発表会にするためのポイントを一言でお願いします。

佐藤:企業が言いたいことを発表する場ではなく、メディアが社会に伝えたくなるニュースを設計する場にすることです。社会性、初出し情報、画づくり、登壇者の言葉、会場演出、誘致、当日運営、事後フォローまで一貫して設計する必要があり、どれか一つだけが良くても、文脈がつながっていなければメディアには届きません。

――PRのプロの視点を取り入れるメリットを教えてください。

佐藤:自社だけで考えると、どうしても企業側が伝えたい情報に寄りがちです。発表会は「イベント」ではなく「ニュースを設計するプロジェクト」です。PR会社が入ることで、社会性やニュース性、媒体特性、映像・写真の見え方、事後の波及まで踏まえたうえで、メディアが取り上げたくなる文脈に変換できます。

私たちは年間161件、10年間で約1,600件の発表会に携わってきました。気になることがあれば、早めにご相談いただければと思います。

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