【ベテランPRスタッフが解説】調査リリースとは?基本のコツ~成功事例まで

2023年11月08日(水) PRのヒント

広報においてプレスリリースは、自社の情報を積極的に発信していくことにより、メディアに自社を知ってもらう機会を増やすことができるため、定期的に配信したいものです。しかし、新商品や新サービスがない場合、リリースするネタ自体がない…なんて悩む広報担当者の方もいるのではないでしょうか。
そんなときにおすすめしたいPR戦略の1つが「調査リリース」です。
新商品がなくても情報発信ができるだけでなく、プレス発表会やラウンドテーブルなどのイベントに比べ、少ない工数でニューネス(新しいトピックス)を生み出すことができます。筆者自身も、実施した調査リリースをもとにTV番組へアプローチをしたところ、朝の情報番組でOAに繋がるなど、露出効果も期待できます。
そこで、弊社の中でも「調査リリース先生」と呼ばれ、絶大な知見があることで有名!?なPR戦略局 園部による解説とともに、調査リリースの基本から応用的なテクニック、これまでの成功事例をお伝えします。

1.調査リリースって何?

調査リリースとは、自社商品やサービスに関連する調査を実施し、その調査結果をプレスリリースとして配信すること。新商品や新しいサービスがなくとも、自社商品に紐づけて情報発信を行うことができる有効なPR施策とされています。また、客観性の高いデータやファクトを通じて自社商品やサービスを知ってもらうことができるため、営業ツールとしても活用できる手法です。

調査PRは、一般的なマーケティング調査とは少し異なり、自社商品の魅力や世の中に受け入れられるポイントの仮説を立て、それをファクトに変える手法。
例えば、新商品でなくても「今年の冬、女性の9割が実は〇〇を欲しいほしいと思っている」のようにPRで重要な“社会性”、“時事性”、“大衆性”をプラスすることができます。

2.調査リリースに必要な要素

調査リリースを書くにあたり、調査概要・調査理由・グラフ資料の準備が必要です。自社のサービスに関わることはもちろん、時節/潮流/社会のニーズに合わせることで、ニュースバリューは重みを増します。
PRに慣れていないとマーケティング調査と認識が混ざってしまうこともあるかもしれません。準備段階で、具体的に「〇%が~~と回答する結果が出そう」「その新事実に世間は驚きそう」とある程度の予測を立てておくことも重要です。

適切な調査機関は、テーマによって異なります。何を調べる必要があるのか、目的に合った手段を選んでいきましょう。ここでは有名な調査方法を3つご紹介します。

  1. WEB調査:インターネットを活用して、対象者にアンケートを配信する調査方法です。調査代理店に依頼することによって、ある程度の回答数が比較的容易に集まります。

  2. ホームユーステスト:調査したい商品を対象者の自宅に送付、一定期間の使用後、意見や感想を得る調査方法です。長期間に渡るアンケートとなり、期間の経過による意見の変化を見ることができます。一方で、商品発送や回収に手間がかかるため、一度に多くの回答が必要な調査には適さず、実施側の管理工数も大きくなります。

  3. 会場調査:企業が開催したセミナーやイベントにて、参加したユーザーに調査を取る方法です。紙でのアンケートやQRコード式でのアンケートが実施されており、より企業と親和性の高いユーザーからの意見を回収できます。

多くの広報担当者は、商品やサービスのニュースの入口として調査PRを行なうことが多いと思うので、WEB調査がもっともポピュラーで使いやすいです。
スクリーニング(調査対象者を絞る作業)も簡単なため、例えば、未就学児のお子さまがいて、都内に住んでおり、日常的に休日出勤をする人を対象に、休日の子育ての課題を調査する…というように、細かな対象者を設定し、問題や課題を詳細に把握するのにもWEB調査は使い勝手が良く、PRに向いています。

もし可能であれば、調査結果をもとに有識者のコメントを入れることもおすすめです。有識者といっても認知度の高い人が必ずしも適切とは限りません。社内の事業部長や担当者など、調査テーマに詳しい人の見解を入れることで、メディア露出や取材へと繋がりやすくなります。

調査リリースはあくまでも実態の可視化なので、どうしてそういう結果になったのか?についての解説が重要です。解説がない場合、例えば調査の一部だけを活用され、本当に露出したい商品に紐づかなくなる、という経験がある広報担当者も多いのではないかと思います。

3.調査リリースにおいて気を付けるポイント

―これまでも数えきれないほどの調査リリースを作成してきた園部さんに調査の成功の秘訣を聞いてみました!

今回はメディアの報道量が増えるポイントを簡単にお伝えします。重要なのは、下記3つのポイントを調査に入れ込むこと。
① 「1行目に“実は” 」・・・現在世間に注目されている母数の大きな最新データ
② 「差異」・・・地域差、年齢差、定点観測など、何かと比較した大小
③ 「社会トピックス」・・・法改正、社会記号、子育て、男女差など普遍的な関心ごと
 
一方、キャッチーさを重視し、その結果商品やサービスと紐づかない場合、満足いく結果にはならないことが多いです。例えば、【コロナ禍で外出を控える人が増加したので、おうち時間を充実させるワイン】のように、上段の母数が大きく、どんな状況にもあてはまるものと商品が紐づいていなければ、結果的に商品の報道は増えません。調査はたくさん露出したけれど、他社の商品の紹介に調査だけ使われてしまった経験もしばしば…。
調査設計の時は、ぜひ最後の考察から書き、商品やサービスと違和感なく紐づけられることを意識しましょう。
調査の結果の、「なぜ?」がしっかりと解説されてあり、その先の企業のサービスの利点やソリューションと紐づくことが成功のカギといえます。

4.調査リリース成功事例

ここからは調査リリースの成功事例をいくつかお見せしていきます。いずれもここまで解説してきたようなポイントを抑えたことで、TVや専門誌、WEBなど多くの媒体で露出することができました。露出した記事の中には、調査から商品に落とし込まれているものも多く、違和感なく紐づけることに成功している事例です。

〇イヤホン・ヘッドホンの長時間使用とイヤホン蒸れに関する調査/NTTソノリティ株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000106079.html

音響ブランドnwm(ヌーム)において「耳をふさがずに耳元だけに音を閉じ込める」PSZ技術を搭載した新体験、耳スピーカー「耳スピ」を展開するNTTソノリティ株式会社は、2023年6月に「イヤホン・ヘッドホンの長時間使用と“イヤホン蒸れ”に関する調査」を実施。 新型コロナ以降、イヤホンの使用時間が増加したという調査結果を踏まえ、第一線で活躍する耳鼻科医を招き、密閉型イヤホンの装着時間が増えるとともに危惧される外耳トラブルへの注意喚起をするプレスセミナーを開きました。一般媒体の露出をはじめ、朝の情報番組でも、NTTソノリティ社の調査結果に基づいてイヤホン×耳の実情を探る露出の拡大に成功しました。

〇コロナ禍でのストレスや白髪悩みに関する実態調査/株式会社ランクアップ(マナラ化粧品)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000121.000009540.html

白髪染めで傷んだ頭皮と髪をケアする商品の発売にあたり、コロナ禍でのストレスや白髪悩みに関するインターネット調査を実施。その結果、コロナ禍以前と以降の生活において「ストレスを感じる機会が増えた」と感じている人が7割にのぼり、さらに肌・髪・体型の変化を感じている人は8割以上、その中でも『白髪が増えた』という回答は7割以上にのぼることが明らかになり、複数の女性系媒体で商品を紹介する入口として調査が活用されました。

―一般的なマーケティング調査とは設計の仕方から大きく異なる調査PR。はじめは難しく感じるかもしれませんが、バリューの高い調査リリースの配信ができたときの効果の大きさは絶大です。PR施策の有効な手段の1つとして、より効果的な調査リリースの作成を目指しましょう。

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