【ローカル開拓のカギは“○○を見つけること”】元地方新聞記者に聞くローカル攻略術

2023年05月11日(木) PRのヒント

自分が生まれた都道府県の地方紙を読んだことはありますか? 地域によっては6割以上のシェアを誇り、身近な情報源として多くの住民に親しまれています。

知っているようで知らない地方紙について、前職で「岩手日報」の記者を経験し、現在は弊社でメディアプロモーターとして活躍するPR戦略局の金崎にインタビュー。PR業界との意外な共通点や、自社商材を地方紙に掲載してもらうためのコツを、自身の記者経験をもとにお話ししてもらいました!

地方への露出やローカル媒体の開拓を考えている方は必見です。

地元のためにできる仕事として見つけた「地方紙の記者」

岩手日報の記者になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

金崎:私は岩手県生まれなのですが、高校2年生の時に東日本大震災を経験し、祖母の自宅が流され、仮設住宅暮らしをしていた期間がありました。私自身は内陸部に住んでいたため被害は少なかったのですが、大切な家族が被災してしまったことをきっかけに、地元のためにできる仕事をしたいと思うようになりました。

具体的に就職先を考え始めたのは、震災から既に3年が経過した頃。だんだん瓦礫が撤去され、新しい街ができ始めていて、県内にいても「震災は過去のこと」と風化しつつありました。時間が経っているからこそ仕方ない部分はあるけれど、今も苦しんでいる人がいるにもかかわらず「過去のこと」になっている街の空気に違和感を覚えたんです。

そんななか、岩手日報は絶えず震災後の姿を報道し続けていることを知り、地方紙なら入社後も地元のリアルな姿を伝え続けられると思い、入社を決めました。

記者時代のお馴染みグッズ。慣れた手つきで紹介してくれました

「伝えること=地元のためにできること」だったんですね。

金崎:そうですね。岩手日報は県内の読者に向けて情報を発信するメディアだからこそ、全国紙に比べると狭いコミュニティではあるけれども、県内への影響力は大きい。私が代わりになって伝えることで、頑張っている人たちの背中を押せるのは、地方紙の大きな価値だと感じていました。

PR業界の立場から見ると、地方は小さい会社も多いし、必ずしも社内に広報担当者がいるわけでもありません。記者時代には自社のネタを自らプレゼンテーションして売りこみに来られる社長さんも多くお見かけしました。広報において効果的な手法を知らないため、面白い施策を行なっているのに発信下手な会社も多くいらっしゃったんです。

隠れた魅力を記者が代わりに伝えることは、記者の意義にもつながるかもしれないと思ってやっていました。もちろん、影響力が大きいからこそのプレッシャーや責任もあったんですけどね。

鬼剣舞(おにけんばい)へ参加!?地方紙の記者だからこそ生まれた地元の方とのつながり

具体的にどんな方に取材することが多かったんでしょうか?

金崎:県政を担当していました。取り扱う話題としては、震災復興や道路・建設などのインフラ関係、環境問題、選挙などです。震災の被災者やご遺族のお話しを伺って、リアルな声を届けるということもやらせてもらいました。また、選挙の時期は世論調査のために、特定の地域に入って地域住民のお話しを伺いに回ったこともありました。

取材に訪れたご家庭では帰りに野菜を持たせてくれたこともあったそう

調査自体も記者さんが行うんですね!

金崎:記者って記事を書くイメージが強いと思いますが、チームで動いて事実確認をしたり話を聞いて回ったりと、記事の準備段階からしっかり携わることも多かったです。

記者時代は濃ゆい出来事も多かったんじゃないですか?

金崎:ここで伝えきれないほどありますね(笑)。支局勤務の時に、岩手県の伝統芸能であり鬼のような面をつけて踊る、鬼剣舞(おにけんばい)を取材したことがありました。取材をきっかけに1年くらい習いに行ったんです! そしたら最終的に夏祭りにも出させていただいて。

こういう地元の方たちとの繋がりは、地元紙ならではだと思いますし、印象に残っています。記者と読者、記者と取材相手という立場を超えて仲良くしていただけるのは、ありがたくもあり嬉しかったです。

【鬼剣舞(おにけんばい)】に参加した金崎さん

聞いているだけで温かい気持ちになりますね。ちなみに素朴な疑問ですが、地方紙の普及率ってどれくらいなんでしょう?

金崎:日本各地に地方紙はありますが、地方紙普及率全国1位の福井県は6割以上にも及んでいるそうで、地域毎に異なるものの、読んでいる方はかなり多いと思います。読んでいない方でも、上司やご家族など周りの方が読んでいるから、共通認識の媒体として会話の種になることもよくあります。

さっきの話に少し戻るのですが、読者と距離感が近いからこそ「読んだよ」と言ってもらえることもあり、直にリアクションが届く環境にいることができたのは貴重な経験だったなと思います。

地方紙掲載のポイントはコレ!知っているだけで簡単に掲載確度が上がる!?

お話を聞いてだんだん岩手日報へ入社したくなってきましたが、実際記者ってどんな方が多いんでしょうか?

金崎:一芸を持っていたり、趣味を突き詰めていたりと好奇心旺盛な人が多いです。あとは地元出身者がやっぱり多い。一方で、大学入学を機に岩手へ来てそのまま就職した人もいました。地元出身でも、地域について知れば知るほど、同じだけ知らないことも出てきます。取材を通じて知る文化や特産物もたくさんありました。

取り扱うネタにも特徴がありそうですね。

金崎:地方紙はその地域をとにかく大事にしています。大袈裟に言うと、その地域に関連することだったら一気に掲載の確度は高まる。特にその土地の出身者の話だと、媒体と読者の距離が一気に近くなりますね。たとえば今だと大谷翔平選手とか。岩手県出身の選手がこんなに世界で活躍しているという話題は地元紙としては伝えたくなりますし、読者からの反響も大きい。

あとは、他の地域の新店オープンの話でも、オーナーが岩手出身だったり岩手県名物のものを扱っていたりすると、紙面に取り上げるか検討する水準に達します。ネタの基準は厳格に定められているわけではないので、記者時代はとにかく地域情報を逃さないよう念入りにチェックしていました。

これらを踏まえて、現在ローカル媒体にプロモートするときには「いかにその地域に関連している情報か」を意識してリリースや報道資料を作るようにしています。それは施策を考える段階でも同じ。その地域の情報を調べてみながら、関連性に着目することが大事です。

記者歴が長い金崎さんですが、今でも残っている記者特有の職業病ってありますか?

金崎:確認癖と早食い癖です。確認癖は、発行するものが印刷物だからこそ、間違いを起こすことは言語道断。修正が絶対的な悪とされるため、ミスをゼロにするための策として確認の徹底が習慣化されてしまいました。現在もそのときの習慣からかミスがないかは念入りに確認してしまいます。また、速報が出たらすぐに動かなければいけない環境下にいたので、早食いが得意になりました。食べられるときに食べる精神です(笑)。

共通の表現が事細かに並ぶ記者ハンドブックは執筆の大事なお供

“逆三角形”を意識!プレスリリースにも通ずる執筆のコツ

話は変わりますが、記者時代、原稿はどのように書き進めていたのでしょうか?

金崎:まずはリード文を書き、その次に本文を書きます。リード文は、情報を簡潔にまとめながら読者に何のニュースなのかを一目でわかってもらえる内容でなければいけません。そのため、必然的にリード文にかける時間は多くなります。新聞に適した文章と呼ばれている「逆三角形の構成」を意識して、最も大切なことを最初に置き、それ以降は大切な順に説明するようにしていました。

また、質の高いリード文を執筆する上では見出しを同時に考えていくこともあります。見出しを考える専門の部署があるので最終的にはそこにお願いしますが、見出しの制限文字数である10文字にまとめようとすると、必然的に伝えたいメッセージや単語が浮き上がってくる。そうするとリード文に何を盛り込めばいいのかもわかってきます。PR業界で作っているプレスリリースでも、タイトルでメディアを惹きつけられるかがとても重要なので、考え方は案外似ているのかもしれません。

インタビューの途中でPRとの共通点がどんどん見つかり大盛り上がりに

WEBメディアなどプレスリリースから書き起こされた記事も目にしますよね。記者時代にプレスリリースを目にすることはあったのでしょうか?

金崎:日々届いていました! 広報の方が熱心な企業や行政は頻繁に送ってくださるので、日常的に触れる情報源の1つでした。やはり目につくのは「新しい情報」ですね。他の地域で流行っているものはどうしても遅れて入ってくることが多いので、「岩手県初」という言葉には惹かれていました。一方で「岩手県なのに○○」といった意外性があるネタも、パッと見たときに気になっていました。

記者からPRパーソンへと転職されたのも、記者時代に広報の方と接する機会があったからなのでしょうか?

金崎:結果的にはそうなのかもしれません。実は最初からPR業界への転職を決めていたわけではありませんでした。記者時代は商品やサービスに対して「こういう要素があったらもっと魅力的で面白いのにな」と思うことがよくあったのですが、そのモヤモヤを解消するのは記者の立場だと限界があるんです。でも、PRの力を使えばお客様と伴走しながらより良い形を考えて、世の中に面白い情報を発信できるかもしれない。そこで、自身の経験を活かしつつ、ニュースをつくり広げることができるPR業界に挑戦したいと思い、KMCへの入社を決めました。

実際、PRパーソンとしてメディアへのアプローチや資料作成を行なうなかで「自分が記者時代にこのプレスリリースや発表会の案内状を受け取ったらどう考えるか」というのは必ず念頭に置いています。また、お客様と打ち合わせをして施策を詰めていくなかでも、「この施策だったら記者はどのように取り上げるか」という記者視点での考えを含めてご提案をさせていただくこともあります。そうすることで、お客様が伝えたいメッセージをより正確に、より多くの方へ届けることに繋がっていけたらなと。ゆくゆくは岩手県をはじめ地方を盛り上げられる施策も行っていけるように頑張ります。

--------記者とPRパーソンの両方の視点を持つ金崎さんの熱い姿勢には、聞いている私も自然と背筋が伸びました。これからも金崎さんだからこそ生み出せるメディアリレーションやアイデアを楽しみにしています!

PR戦略局アソシエイト 金崎諒
岩手県出身。新卒で地元の新聞社に就職し、東日本大震災からの復興や防災、国政選挙などの取材を担当。記者歴7年の経験をもとにKMCgroupへジョイン。現在は食品やITなどを担当している。

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