【動画座談会】広報が知るべき「見られる動画」の正解。プロモーション動画&ショート動画、戦略の分岐点は?

最終更新日: 2026年05月26日(火) PRのヒント

「動画制作に予算をかけたのに、思ったほど再生されない」「SNS用に自作してみたが、ブランドイメージに合わずチープに見えてしまう」……多くの広報担当者がこうした悩みを抱えています。様々な動画が世の中に発信される中、企業はどのような戦略で動画と向き合うべきなのでしょうか。

今回は、KMCgroupのグループ会社の各メンバーが集結しこれからの動画について座談会を実施。テレビディレクター出身の動画事業責任者、ブランド価値向上のための企画を提案するプランニングスペシャリスト、そしてメディア事業責任者の3名が集結。プロモーション動画とSNSショート動画の決定的な違いから、明日から使える動画の具体的な構成術まで、現場のリアルな知見を語り合いました。

【座談会メンバー紹介】
フィールドキャスター:田中(動画事業責任者)
KMC:福永(PR戦略局 プランニングスペシャリスト)
オンエア:小泉(メディア事業責任者)

「最後まで見られる」プロモーション動画の構成術

――会社紹介や商品PRなど、じっくり見せる「プロモーション動画(長編動画)」について伺います。動画に多くの情報を詰め込もうとして、逆に離脱されてしまうケースも多いようですが、プロの視点ではどのような動画構成にすべきでしょうか?

田中:僕は長年、テレビの世界で「いかにチャンネルを変えさせないか」を考えてきました。その経験から言うと、動画の本質は「熱量」だということです。単なる情報伝達ではなく、出演者の表情や声のトーンから伝わる信頼感こそが、動画ならではの価値だと思います。ですから、15分ほどの長編動画でも、最初の30秒に「おいしい映像(見どころ)」を凝縮して持ってきます。まずは冒頭で視聴者の興味をガッチリ掴む。これをやらないと、どんなに良い内容でも最後までたどり着いてもらえません。

福永:同感です。プロモーション動画には「起承転結」が必要ですが、今の視聴者は長い説明に耐えられない人も多い。だからこそ、引き算が大事です。思いが強すぎてすべてを詰め込むと「見たくない動画」になってしまいますが、要素を絞り込んでエッセンスを抜き出すことで、「見たくなる動画」にすることができます。

小泉:メディア視点で言うと、大型家電や旅行のような高単価で比較検討が必要なものは、やっぱりテキストや長編動画でじっくり理解したい。でも、情報の密度と尺が見合っていないと離脱されてしまうので、無駄を削ぎ落として再生完了率を上げることが、プロモーション動画の構成術だと思います。

「指が止まる」SNSショート動画のアルゴリズム攻略

――一方で、TikTokやInstagramのリールなど、「ショート動画」は、まったく異なる戦略が必要そうですね。

福永:ショート動画はもっと厳しくて、最初の1秒、長くても3秒で指を止めさせないと、スワイプされて終わりです。僕がよく意識するのは、違和感と安心感の組み合わせです。最初に結論を見せて「えっ、なんで?」という違和感で指を止めさせる。一方で、流行っている音源や見慣れたフォーマットを使って「あ、これ知ってる」という安心感も与える。このセットによって視聴者は無意識的に手を止めて最後まで見てくれますし、それがアルゴリズム的にも有利に働くので結果的により多くの人に届く動画になります。

小泉:私たちのメディアでも、意識しているのは、コンビニスイーツやファストフードのような身近な商材なら、1~3秒で「これ食べたい!」と思わせる直感です。「第三者目線」を意識して、商品の最も魅力的なポイント、例えばお菓子の歯ごたえの音なのか、鮮やかな色なのかを、冒頭1〜2秒にピンポイントで持ってくるようにしています。

田中:あとは「主語」の違いですね。商品説明動画は「自分が言いたいこと」を話しがちですが、ショート動画は「相手(視聴者)が知りたいこと」に振り切るべきだと思います。この商品で悩みがどう消えるのかというベネフィットを、楽しい映像で一瞬で見せる。そして、完璧な完成度よりも、ちょっとツッコミどころがあるくらいのほうが、コメントやシェアが生まれて再生数が伸びたりします。

動画作りで「失敗しない」ための第一歩

――戦略によって作り方も目的も違うことがわかりましたが、いざ始めるとなると、予算やAI活用など、迷うポイントも多いです。失敗しないためのポイントを具体的に深掘りさせてください。

● 予算配分の考え方

田中:制作コストを「資産」と捉えてほしいですね。一度プロと一緒にしっかり作った動画素材は、SNSだけでなく、採用サイトやLP(ランディングページ)、営業資料などにも使うことができます。スマホで撮る手軽な動画と、プロに頼む勝負動画を使い分ければ、コストパフォーマンスは高くなると思います。

● 尺の最適化

小泉:「長い動画と短い動画、どっちがいい?」とよく聞かれますが、情報密度によりますね。私たちのメディアではYouTubeには長編を、TikTokにはその中から一番面白い部分だけを切り抜いて投稿しています。ひとつの素材を使って、それぞれのプラットフォームに合わせて『おいしいとこ取り』をするのが一番効率的だと思います。

● KPIの設定は「再生回数」だけではない指標

福永:広報担当者に伝えたいのは、再生回数だけがすべてじゃないということです。動画を作ったことで「社内のモチベーションが上がった」とか、「営業が話しやすくなった」というのも立派な成果です。

田中:あとは、良い動画素材があると、テレビ番組の制作陣から「素材を貸してほしい」と声がかかって、大きなPRにつながることもあります。

● AIの活用可能性

田中:これからはAIでパーソナライズ(一人ひとりに最適化)が進むと思います。台本作りや字幕生成だけでなく、個々の視聴者の好みに合わせた共感性の高い動画を生成して届けるようになるでしょう。

【まとめ】2つの視点を使い分ける「ハイブリッド広報」へ

――最後に、これから動画活用を本格化させたい広報担当者へメッセージをお願いします。

福永:活字を読まない若者が増え、今後その層がビジネスの中心になることを見据えると、動画は作って当たり前の時代が来るでしょう。今さら、名刺を作るかどうかの議論を誰もしないのと同じ状況になるということです。まずは競合他社の動画をたくさん見て、自社のイメージを具体化することから始めてみてください。

田中:特にショート動画には、これまでの媒体にはなかった「関心がなかったユーザーにリーチできる爆発力」があります。ただし、ショート動画にも長編動画にも共通して必要なのは「企画の質」です。カメラを回す前の企画段階で、動画の勝敗は9割決まります。

福永:もちろん企画は重要です。それに加えてSNSで見られる動画を作るためには、アルゴリズムを踏まえた上での戦略が必要です。さらに、バズを起こしたり、フォロワーを獲得したりしていく継続性も大事になってきますね。

小泉:動画は広告だけでなく、企業の記録や歴史を保存するデジタル資産でもあります。重厚なプロモーション動画で「信頼」を築き、機動力のあるショート動画で「接点」を増やす。このハイブリッドな攻め方が、これからの広報のスタンダードになると思います。

「動画制作は大変そう」と思っている広報担当者も、動画制作はもちろん、そこから派生するSNS運用などにおいても「戦略」は重要になっていきます。自社だけではなかなか戦略の組み立てが難しい・・・という場合は知見を有したPR会社の活用について検討するのもオススメです。

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